溶連菌感染症

 A群β溶血性連鎖球菌(溶連菌と略されます)という細菌により引き起こされる病気の総称です。細菌の侵入部位により様々な症状を呈します。日常よくみられる病気は喉に起こる急性咽頭炎で、その他皮膚に出来る膿痂疹、傷口から菌が進入して起こる蜂巣織炎があります。また、特殊な病型として猩紅熱も起こします。中耳炎や肺炎、骨髄炎、化膿性関節炎、髄膜炎などを起こす菌としても知られています。合併症として菌が直接侵入して病気を起こすのではなく、免疫学的なメカニズムを介して急性糸球体腎炎やリウマチ熱を起こすことがあります。メカニズムは不明ですが軟部組織壊死と敗血症性ショックを呈する劇症型溶血性連鎖球菌が極希に問題となります。
 患児の咳やくしゃみにより溶連菌が飛び散り、それを吸い込んで感染します。
潜伏期は2−5日です。突然の発熱と全身のだるさ、咽の痛みで発症し、しばしば嘔吐や腹痛、頭痛を伴います。喉は真っ赤となり、扁桃腺に白い膿み様のものが付き、喉の奥に小さな出血斑が出てきます。数日経ちますと舌が赤くなり、ブツブツが出てきて苺状になってきます(苺舌)。
 猩紅熱の場合、発熱後12−24時間経過すると赤く細かい発疹が手足や体に現れます。特に腋の下や足の付け根に多くみられます。顔面では額と頬が紅潮しますが、口の周りのみが蒼白となる(口囲蒼白)のが特徴です。数日経つと苺舌も見られます。また、1週間経つと皮膚がポロポロ剥がれ落ちる落屑が始まります。
 治療には第一選択薬としてペニシリンを用います。薬を服用すると1−2日で熱が下がり、喉の痛みなどの症状は軽快しますが、溶連菌は残っています。再発や合併症を起こさないためには10日間薬を飲み続けることが重要です。薬を飲み続けていれば解熱後1日経てば他人にうつす心配はなくなると考えられています。
 予防としては患児との濃厚接触を避けることが最も重要です。うがいや手洗いなどの一般的な予防法も大切です。